モバイルAIは、私たちの生活やビジネスに革新をもたらす一方で、従来のセキュリティでは防ぎきれない新しい攻撃リスクを生み出しています。AIモデルの改ざん、プロンプトインジェクション、知的財産の盗用など、攻撃手法は急速に高度化し、金融・医療・IoTといった高リスク業種では深刻な影響を及ぼす可能性があります。Promon社のブログ
Emerging threats in mobile AI: What businesses need to know
では、企業が理解すべき脅威とその背景、そして今後求められる防御戦略を詳しく解説しています。このページではこのブログを紹介し AIを安全に活用するための解説しています。
はじめに:モバイルAIの進化と新たな脅威
モバイルアプリにAIが深く統合されており、ユーザー体験の根幹や業務プロセスで重要な役割を果たすようになります。ただし、従来のモバイルセキュリティでは対応しきれない新たな攻撃リスクが生じています。AIがデバイスエッジまで浸透するほど、攻撃対象はメモリ内モデルへの操作・抽出・悪用へと拡大しています。
なぜモバイルでAIが急拡大しているのか
このブログではモバイルAIの普及の理由について以下のように述べています。
- リアルタイム処理と低遅延:即時判断が求められる用途での利便性向上。
- プライバシー保護とオフライン対応:機密データをクラウドに送らずデバイス内で処理。
- クラウドコストの削減:通信量や処理コストを削減可能。 検討対象には、小型言語モデル(SLM)、意思決定エンジン、マルチモーダルAI、フェデレーテッドラーニングなどが含まれ、銀行、医療、ゲーム、スマートIoTなど広範な業界に普及中。
モバイル AI 市場について
このブログでの引用している
On-device AI Market (2025 – 2030)
ではモバイルAIの市場規模と予測が書かれています。
モバイルAI(On‑Device AI)市場の成長規模
- 2024年の市場規模は、グローバルで 86億ドル と推定されており、「オンデバイスAI市場」の文脈ではこれに相当します。
- 2030年時点での予測では、366億4,000万ドル に達し、2025〜2030年の年間平均成長率(CAGR)は約27.8% と示されています。
- モバイルAI全体市場は、2024年に 194億2,000万ドル と推定されています。
- これが2030年には 849億7,000万ドル に成長するとされ、2025〜2030年のCAGRは約28.9% に達します。
モバイルAIの普及は、5G導入やIoT普及、端末上AIチップなど技術革新によって加速されています。
新たな脅威の台頭:モバイルAI特有のリスク
モバイルAIの利用に際し考えられるリスクは以下のように挙げられている。
- ランタイム操作/挙動改ざん
アプリ実行中のメモリを改ざんして、AIロジックや制御を迂回可能。
→ 医療アプリでは誤った治療推奨、金融アプリでは不正審査通過を引き起こす恐れ。 - AIモデルの窃取・リバースエンジニア
モデルそのものが企業の知的財産として搾取対象となり、ライセンス違反や競争力低下を引き起こす可能性。 - プロンプトインジェクション攻撃
LLM系AIで入力操作により、AIの応答内容を変えたり、機密データを抽出させたりする“プロンプトハイジャック”が可能。 - アプリ内データ操作
ローカル構成ファイルや意思決定木を操作し、不正挙動やアクセス権の奪取を誘発。 - AIランタイムへの悪意あるコード実行
オフライン環境でAIランタイムが充分に保護されていない場合、マルウェア注入の足場にされ、さらなる攻撃が行われる可能性。
高リスク業種における具体的影響
各業種に対して考えられるリスクは以下の通りです。
| 業種 | 主なリスク例 |
|---|---|
| 金融/医療 | AI判断の改ざんによる詐欺や危険な医療判断。高い規制・責任の重さ |
| ゲーム | チート検知モデルの改変、NPC制御の悪用、知的財産の乗っ取り |
| スマートIoT | スマートロックやセンサーの異常操作、音声コマンドの改ざんによる不正アクセス |
規制・法規制の強化動向
- EU AI規則:高リスクAIには改ざん耐久性、ログ取得、運用後監視が義務。
- GDPR(EU一般情報保護規則):AI設計段階でのプライバシー強化(データ保護設計原則)。
- NIST AI RMF/ISO 42001:自律AIの安全設計・運用管理の国際的ベストプラクティス。
多くのアプリは“軽微なAI機能”であっても、高リスクに該当する可能性があるため、セキュリティ・開発・コンプライアンス組織を巻き込んだ対応が不可欠です。
従来のモバイルセキュリティが不十分である理由
- アプリコード保護に重きを置き、AIモデルの整合性や動的挙動には対応できない。
- メモリ改ざんなどのランタイム攻撃を検知できない構造。
- 静的防御に偏っており、プロンプト改竄やI/O操作には対応できず。
- モデルや推論・入出力経路そのものを防護対象に含まれていないため、AIに対する侵害が実行されても気づかれにくい。
結果として、AI搭載モバイルアプリがもたらす便益に対し、現行のセキュリティモデルは十分に対応できていません。
必要とされる新たなセキュリティモデル
モバイルAIの安全確保には、以下のようなアプリ内防御が不可欠です。
- AIモデルのIP保護:モデル盗用・逆アセンブルへの耐性。
- ランタイム防御:実行中の不正操作に対する検出・防御。
- 入出力保護:入力データやプロンプト改竄への対策。
- 完全性監視・難読化:モデル改変の検出と改ざん耐性。 これにより、アプリレベルでのAI完全防御への移行が可能となる。
これにより、アプリレベルでのAI完全防御への移行が可能となります。
まとめ
- モバイルAIアプリを運用・開発する企業は、AI固有の攻撃モデルを理解し、防御体系に組み込む必要がある。
- 従来の「バイナリ保護+クラウド監視」だけでは不十分。モデルと挙動を守るアプリ内セキュリティ層が必須。
- 規制順守、信頼性維持、知財保護の観点から、開発初期からセキュリティ設計を導入すべき。
- Promonでは、レイヤード防御による具体的保護策については、AI駆動型モバイルアプリを新たなセキュリティ脅威から守る方法【Promonブログ紹介】では実装方法や事例紹介をしています。
スマートロックや音声アシスタントなど、IoT機器に組み込まれたAIは日常生活の利便性を高めていますが、同時に不正アクセスや制御の乗っ取りといった新たな脅威も生まれています。Promon社のブログは、こうしたリスクに対して、端末レベルでの防御の重要性を説いており、IoT製品の信頼性を維持するための指針となります。安全なスマート社会の実現には、AIセキュリティの強化が不可欠です。
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